「孤独の城」
七世代目のMorningParkは、燃えていた。
肩の上にちょこんと乗っかったナナシは声を上げて、創造主である”えん”の首に頭を埋めて泣いている。
えんは、MorningParkの樹のある丘から、ずっと燃えいく町を見ていた。
住人達の避難は、精霊であるエリアが頑張ってくれているはずだ。
もう一度、私の『幻の思い出』の中へ、精霊や妖精や旅人達を宿らせなければならない。
だから、私は、この楽園の事を、忘れないようにこの目に焼き付ける。
虹創旅団の事。そして、私を捨てた人間の事を。
仲間達は、みんなここを出て行った。
私と一心同体であったはずの人間は、自らここの鍵を捨てて、別の楽園へ向かった。
虹創旅団はこの町の虹を守る為に尽力してくれた。だからなんとか、『真実の虹』だけは保たれた。
だが、エリアの移し身である女王ハーモニアはまだ、眠っている。
彼女の体内に、全員を宿らせ、避難させよう。
その町を壊しているのは、1体の大きな巨人であった。
彼は漆黒の体をして、「孤独」という名前を持っていた。
彼はそれまでの全てを壊したい欲求でいっぱいだった。
何か存在していれば、孤独でいることは出来ない。一度全てを破壊し尽くさなければ彼に安息は訪れない。
それがどんなに大切なものであろうとも、いや、大切だからこそ、彼はそれを排除したかった。
彼は虚無の鎧をまとい、漆黒の宇宙のようなレンガで出来た腕で、町を壊し、そのぽっかり空いた口で、冷たい大風を吹かせた。それはダイヤモンドダストのように、キラキラ光って、全てを凍らせていく。
彼の両腕は、憎しみと怒りで、炎を生んだ。
そして彼はそれを動物園のゴリラのように、あらゆるものに投げつけて、全てを焼き尽くしていった。
嘆きの声が聞こえる。
もちろん、あれを産んだのは、創造主である私だ。
そう、えんは知っていた。
巨人はあらゆる物を壊しつくした。そして両手を上にあげた。
町のがれきが集まり、元は町のあった中央で火は爆ぜ、氷は光ながら回転を始める。
そして、それは姿を現した。
城だ。
漆黒の黒曜石で出来た、城。
「孤独の城」だ。
いつのまにか、エリアが後ろに立っていた。
「後はお任せ下さい。創造主。」
彼女は腕に、「町の欠片」を抱えていた。
ナナシが、不安げにえんの顔を見て、首筋に抱きついた。
えんは泣いていた。
何も感じない。
何も、何も感じない。
誰も信じられない。
見るのは、悪い夢ばかりだ。
私の想像の町である、このMorningParkを、壊したのは私だ。
これからどこへ行けばいいのかわからない。
だが、私にはやらねばならないことがある。
私の中には、「希望の光」がある。だから、それを守らなければならない。
私は手をエリアに差し出した。そして目を閉じ念じると、思念の渦巻いた白い球体の中に、町の思い出が虹色に渦巻いた「町の思い出」を、エリアに手渡した。
「全ての住人と、新しい旅人は、私達がこの思い出の町で、きちんとおもてなし致します。」
私はいった。
「ああ。頼んだよ、ナナシ、エリア。」
ナナシがえんの頬を叩いて言う。
「えんは・・・来ないの?」
僕は、ぎゅっと、ナナシを抱き締めた。
ナナシが目を開いて、わからないと言う表情をした。
僕はナナシをそのまま両手でつかんで、エリアに突きつけ渡し、両手を上に突き上げる!
そして言葉に鳴らない声で泣き叫んだ。
「あーーーーーー!!」
それに巨人が呼応する。
「グゥォオオオオオオ」
巨人の黒い体が、霧となり、えんの口からえんの体内へと入り込んでいく。
そして全てを飲み込むと、えんにはもうナナシの姿も、エリアの姿も見えなくなってしまった。
見えるのは孤独の城へ続く、朧な白い道だけ。
そこへ、一人の女が現れた。
「アルテミス。」
彼女は青白い光を放つカンテラを持ち、エンジ色のドレス、腰まで流れるソバージュの髪をしている。
「孤独の王よ。私たち、悪夢の住民が、王のお世話を致します。」
孤独の王は、アルテミスと呼ばれたその女の手をとって、歩き出した。
〜〜
終わり