アース 私は、旅を続けている。
ある時は桜の咲く町を、風が吹く海を、色付く山を、見渡す限りの雪の平原を。そして今は砂漠を、勇者は歩いている。
アース 孤独な旅だ。
夜には膝を抱いて眠った。思い出を掌に乗せて、その暖かな光を眺めた。辛く苦しい時には、歯を食いしばりながら、その思い出と共に歩んだ。
アース だから俺は、一人ではなかった。
アースの体を、太陽が容赦なく照りつける。
アース はぁはぁ・・・。暑い・・・。
アースは今にも倒れそうだ。
アース 喉が渇く・・・水が・・・水が飲みたい・・・。
足の裏の豆からは血が噴き出し、靴を真っ赤に染めている。
アース ・・・。
勇者は歩き続けている。広い茶色い一面の砂世界に、勇者の辿る道だけが作られ続ける。太陽と、空と、大地と勇者だけが全てだ。
勇者の体には、いつしか蝶が、寄り添うようにして飛んでいる。白、赤、青、黄色、緑、紫。それは闇を纏い、勇者と遊んでいるかのようだ。
勇者 旅の途中、いつも私は、私のそばを少しだけ離れて歩く、何かの存在を感じていた。
勇者の歩く音だけが、大きく聞こえる。
勇者 それは私の影であり、死の影であり、闇だった。私が歩けば、彼も歩き、私が止まれば彼も止まり私が嘆く時は抱きしめ、私が喜ぶ時には、笑った。
勇者は中空に手を伸ばす。
勇者 お前は、神か。
ガーランドが出てくる。
ガーランド ・・・。どうだろうな・・・。
勇者は歩き続ける。
勇者 死にたい・・・。
ガーランド ・・・。勇者は歩き続ける。
勇者 はぁ・・・はぁ・・・。
勇者 本当に、生きることに、答えなんてあるのかな。ガーランドは同じように歩いている。
ガーランド どうだろうな。
勇者はガーランドと向き合う。
勇者 人は生き延びるべきなのかな、滅びるべきなのかな。
ガーランド さぁ・・・知らないな。勇者は首をかしげる。
勇者 君は何も知らないね。
ガーランド そうかな?
勇者 嘘だよ。何でも知ってるんだろ?教えてよ。僕は正しい?
ガーランド さぁ、知らないね。勇者は歩き続ける。
勇者 いつまで旅をすればいいの。僕はもう眠りたいよ。そして眠ってそのまま死んでしまいたい。
ガーランドは背中から勇者を抱きしめる。
ガーランド 頑張れ。
勇者は一筋の涙を落とす。
勇者 君は、やっぱり神様だ。
ガーランドが勇者の前に出る。そして両手を広げる。
A 無数の色とりどりの扉が現れる。
ガーランド お前は自由だ。どこへでも行ける。選ぶといい。勇者は首を横に振る。
アース 良いよ。いらない。
ガーランドはマントを広げる。
ガーランド さぁ、オアシスだ。約束の地だ。お前に幸せの日々を与えてくれる。
B 目の前に島が現れる。町が、見える。
ガーランド そこへ行けば、またあの頃に帰れる。懐かしい人々に会える。穏やかな毎日と、暖かな光と、溢れる希望。それがお前を満たすだろう。行くといい。アースは首を振る。
アース 行かないよ。
ガーランドはやれやれという風に手を広げる。
ガーランド まったく、お前は幸せの青い鳥でも探しに行くのかね。
アースは答える。
アース 私がどこへ行くのかは、誰にもわからない。私にもわかりません。
ガーランド ならば、どこへ向かっている!何故歩く!アースがガーランドの瞳を見つめる。
アース それは、私を待っている人が、そこにいるから。だから私は、そこへ行かなければならないのです。
ガーランドはアースの瞳を覗き返す。優しい瞳で。
ガーランド 一人で、行くのか。
アース えぇ。
ガーランド たった一人で?
アース はい。
ガーランド 仲間はどうした。死んだのか。勇者は笑う。
アース いいえ。別れたのです。今はどこでどうしているのか、わかりません。ただ、私は彼らが幸せになることを祈っています。それに、
ガーランドが首をかしげる。
ガーランド それに?
アース 私の戦いは、私のものだから。ガーランドはやれやれという風に首をかしげる。
ガーランド お前も幸せになればいいではないか。
勇者 それは無理です。世界にただ一人でも、苦しむ人がいる限り、私は幸せではありません。だから、勇者である私は、救い続けなければなりません。それが私の、運命。アースがただ一人、歩いている。
ガーランド そんな運命は、お前が勝手に定めただけではないか!
アースは目を閉じる。
アース そうですね。
勇者は、歩き続ける。
ガーランド お前は、何を求めている?何がしたい。
勇者は歩き続けている。
アース 真実を。
世界は、彼を中心に回っている。
ALL ただ、真実を。
ガーランドは答える。
ガーランド そうか、ならば私はお前と共に行こう。お前のそばにいて、お前を助けよう。
勇者は歩いている。
時間と空間を越えて。ただ、どこまでも。
光と、闇と、共に。