”破壊が無ければ再生は無い 生命の循環の永遠の形 真実の種から産まれた木”

MorningParkには大きな樹が生えていて、世界中の色とりどりの美しい花が咲き、あらゆる果物の実がなります。

このMorningParkの樹は、表現をするための掲示板です。どんな言葉でも、詩や小説、散文、イラストや音楽でもかまいません。あなたの思いを、届けてみませんか。
それはこの木を育む栄養になって、実をつけ、花を咲かせ、ここを訪れた旅人を癒します。

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MorningPark物語:君に会いに(草稿) えん 11/12/4(日) 6:17

MorningPark物語:君に会いに(草稿)
 えん E-MAILWEB  - 11/12/4(日) 6:17 -
MorningPark物語:君に会いに(草稿)

用語・登場人物解説
この町:ある旅人が作った大きな木を中心にした旅人の町。この世とあの世の間にあり、力尽きた旅人にはそこへ通じる扉が現れるという。旅人と精霊・妖精・妖怪・天使・悪魔の類が共生している。
ナナシ:その町に住む子供の妖精。目がでかいのをコンプレックスにしていて、拾った帽子をいくつも頭に被っている。穴が開くとそこを広げて、何個も頭に被る。変幻自在である。
えん:森のはずれに住む旅人の青年。

この町を誰より愛する君に

ナナシは草原で、女の像に寄りかかり、空を見上げていた。
その女は、ずっとこの町で、とある旅人を待ち続けて死んだ女で、町中の旅人に愛されたからみんなにお母さんと呼ばれていたし、それでここに像が建てられた。
人以外の生命はこの町では基本的に死なない。精霊や妖精、妖怪などのそれらの類は、自分で死ぬ時を決めるし、蘇ることだって出来る。
だから、彼ら人でないものにとっては、彼女が自分たちが体験する最初の死であった。
ナナシは青空を見つめて雲を眺め、彼女のことを考えていた。
「あいつのところへ行きたい。」
空にいそうな気がして、どうにかして、空へ行こうと彼は考えた。
ナナシは少しなら浮ける。
けれどもせいぜい二階建ての家の窓ぐらいまでだ。
それ以上浮くと、ふわふわと落ちてしまう。
どうしたらいいか考えあぐねて、ナナシは森のはずれの、「えん」のところへ来た。

「えん」は、自由を愛してこの町へやってくる青年だ。仕事もせずに日がな一日、森の手作りのぼろ屋敷で、本を読み、詩を書き、釣りをし、動物相手に歌を歌ったりしている。だが、人間界でたまに生活していることもあってか、知恵があるのだ。

「うーん。風船とか。」
「いやだ。もし手を離したらどうするんだ。私が。」

湖の中央で小船に横たわり、パラソルを立てて本を読んでいるえんに、ナナシは抵抗した。

「じゃあ・・・背中に結んであげるよ。」
「降りて来る時や移動はどうするんだ。」
「君は思いつきは適当なのに主張はまじめだね。」
「ちゃんと考えてくれ。ソフィアに会いたいんだ。自由に行き来出来なくてはならん。」
「そうだなあ・・・。風の妖精とかに頼むのが一番いいんじゃないか。」
「この役立たずめ。」

ナナシは何も考えずにえんを選んでしまったことを公開しつつ、ふわっと飛び立った。

「で、風の妖精はどこにいる。」
「知らないの。」
「教えろ。」
「たぶん山の上のほうにいると思うよ。」
「じゃあお前も来い。」
「なんで。」
「一人で山を登るなんて寂しいじゃないか。」



山登りの途中でナナシは道草を食い、岩場の鳥の巣で一緒に昼寝してみたり、なだらかな斜面があれば滑り降りてみたり、桃色の小さな綺麗な花を中心にして、えんと手をつないでおどったりした。
いつしか日は落ちて、頂上につくころには、夕焼けが見えた。

ナナシは、夕焼けを見ながら、おもむろに言った。

「ああ、ソフィア、いるじゃないか。あんなところに。」
「え、どこに。」

えんは聞いた。

「あの夕日の中に。あの夕日の温かさは、ソフィアの笑顔だ。ちょっと、行ってくる。お前も行くか?」
「え、うん、よくわかんないけど、行く。」

ナナシはにこりと笑って、いくつもかぶっている帽子を深く被り直し、えんの手を握る。
えんの背中に、透明な羽が左右二枚ずつ生える。
ナナシは、「風―!かぜやーい!たーすけーてー。」といって、風を呼ぶと、風の精霊の頬に頬を合わせて挨拶をする。
夕日に向かって、気持ちの良い風が吹いた。

「あの夕日の中に、あいつがいるんだ。行くぞ。そんで、ホットケーキを焼いてもらわなければならない。久しく食べてないからな。本当にうまいんだ。」

えんは、自分も食べてみたいと思った。
一人と一匹はそうして、風に乗って、夕日の方へどこまでも飛んで行った。

大好きな、君に会いに。

おしまい

20110826

引用なし

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